環境光を整える/色評価用蛍光灯スタンド Z-208 B/Z-208-EIZO
オーナーズブログ「おうちプリントのススメ編」について説明していきます。このコーナーは写真を撮ることが好きで、パソコンでRAW現像まではするけれどプリントはあまりしたことがないという方を対象にかいています。
おうちプリントのススメ編、第3回目。
前回は、プロ向けプリンター「CANON PRO-10の購入/顔料機か?染料機か?」について説明しました。
今回は、プリントされた写真を観察・鑑賞するための環境光の整備について説明していきます。説明をわかりやすくするために、ここでは正確にキャリブレーションされたモニターを使って写真をプリントしたと仮定して話を進めていきます。
皆さんは自宅でプリントした写真をどのような環境で観察していますか?一般的には、昼光色の天井シーリング1灯の光源下、もしくは我が家のように電球色の光源下で観察している方が大多数だと思います。
しかし、その環境下ではモニターで見た色合いとプリントした色合いにズレを感じている人も少なくないはず。その原因は、天候や時間帯によって色温度が変わることで生じたり、あるいは室内光源の違いによって生じたりします。
早朝にプリントした写真は青白く見えていたのに、夕方に見てみたら黄色味がかっていた、という経験をしたことがあるかたも多いでしょう。もし天候や時間帯に左右されずに常に正しい色でプリントを観察したいのであれば、
Ra値というのは平均演色評価数のことで、数値が100に近ければ近いほど色再現能力が高く、演色性が優れていることを表します。
例えば、モニターの白色点を印刷業界基準の5000K(昼白色相当)に合わせたとしても、室内照明の色温度が電球色相当の 2800Kであったならば モニターで見た色とプリントの色は絶対に同じ色にはなりません。
モニターと同じ色でプリントを観察するためには室内照明も 5000K にしなければなりません。しかしながら、室内照明を 5000K に統一するのは一般家庭はもちろんのこと、オフィスでも現実的には難しいケースがほとんどです。
なぜなら、仮に一般家庭の6畳部屋で 5000K の色評価用蛍光灯を取り付ける場合、十分な明るさを得るためには直管蛍光灯が6本必要となり、インテリアを楽しみたいひとにとってはこれが大きな障壁となるからです。
かくいう僕も、マイホームを建てる際にその事実を知り、インテリアのほうを優先させたかったので泣く泣く諦めた経緯があります(詳しくは、色評価用蛍光灯の検討を参照)。印刷の仕事をしているという人でもない限り、自分の書斎部屋に直感蛍光灯を6本もつけるのはさすがにやり過ぎです。
それが今回の本題です。
上述したとおり、室内照明を直感蛍光灯にするのは現実的には厳しいので 色評価用蛍光灯スタンドを用いて色温度5000K の空間を部分的に作り出してあげるのです。
その代表的な製品が、以下で紹介するZ-208-EIZO です。
この製品は EIZOの製品ですが、中身は山田照明のOEM品です。両者の違いは色評価用蛍光灯が最初から付属しているか否かの違いだけです。山田照明のZ-208 Bはごく一般的な3波長形直感蛍光灯が付属しています。
ちなみに、Z-208-EIZO は山田照明の Z-208 B よりも1.5倍近い価格なので、山田照明の Z-208 B を購入し、別途、色評価用蛍光灯を買ったほうが安く済ませることができます。
僕の場合は、三菱オスラムの20形の色評価用蛍光灯(FL20S-N-EDL-NU)を買いました。紫外線吸収タイプで Ra値99です。
なお、EIZOの直販サイト「EIZOダイレクト」で液晶モニターや遮光フード、キャリブレーションツールなどと一緒にセット品として買えば、Z-208-EIZO も安くGETできます。
さっそく書斎部屋にZ-208 Bを取り付けてみました。
設置方法は、クランプを机にかませて固定するだけです。無垢材の机なので傷がつかないか少し心配でしたが、常識的な使い方さえしていれば問題はありません。
照明のON/OFF スイッチはセードの裏側についています。しかし、個人的には一度固定したセードの角度はそのまま維持したいので、パナソニックの ザ・タップZというOAタップを使ってスイッチの入り切りを実行しています。
色評価用蛍光灯スタンドは予想していたよりもサイズが大きかったので、設置直後はやや圧迫感を感じたものの、時間が経てばそのうちに慣れてきます。
下ジョイント、中間ジョイント、ネックジョイントの3箇所のジョイントがあるため、アームの角度は比較的、自由自在に動かせます。
ただし、購入時はジョイント部のネジがきつく締められているので、アーム角を頻繁に変える方はネジを緩めたほうが使いやすくなるでしょう。
その他、直管蛍光灯が直接目に入らないようにネックジョイント部でセードの角度を調節することができます。それでも眩しいと感じる場合は、「ノリ跡」が残らないパーマセルテープのような絶縁テープを使って遮光するのもひとつの手です。
次に、ローアングルから撮影してみました。
以下写真ではモニターの真上にスタンドを配置していますが、プリントを観察する用途であれば真上にもってくる必要はありません。なお、写真では付いていませんが、実際には液晶モニターに遮光フードを取り付けるべきです。
今度は横から見た図です。Z-208 B の背面(壁面)に空間をあけておいたほうが角度の調整はしやすくなりますが、スペースに余裕がなくても特に困ることはありません。
Z-208 B は価格の割にチープっぽさがあることからネットでの評価があまり良いとはいえませんが、実用上はまったく問題がないレベルです。評価が芳しくない理由はおそらく、山田照明の製品に対してのクオリティの要求が高いからだと思われます。
僕のように、山田照明の製品を購入するのが初めてという方は、「まぁ、こんなもんだろう」というのが率直な感想で、期待以上でも期待以下でもありませんでした。確かに品質と価格のバランスがとれているかといえば疑問が残るところですが、プリント観察用の実用スタンドと割り切れば、十分すぎる性能を有しているといえるでしょう。
実際に、色評価用蛍光灯スタンドの下に写真を置いてみました。5000K の光源下で観察するというだけで、モニターの色とほぼ遜色ない色あいで見えるのは感動ものです。
ただし、モニターとの厳密な色のマッチングするのであれば、机の上に置いたり、手で持って比較するのではなく、プリントを液晶モニターの横に並べおいて観察するほうが好ましい。その際、プリント面への照度は500ルクス程度と規定されています。
さらにプロフェッショナルな環境作りを目指すのであれば、
などの項目もクリアしておく必要がありそうですが、さすがに一般家庭でこれらをすべて実現させるのはデジタル暗室でも作らない限りは難しいと思うので、できるところまで実践するようにしたら良いと思います。
完璧を目指すのも悪くないですが、何事にも妥協は肝心です(笑)。
以上で、環境光の整備についての説明は終了です。次回は、モニターの色を正確に合わせるキャリブレーションツールについて紹介していきます。