スランプ試験・空気量測定・塩化物イオン濃度測定、コンクリートの性質

前回の「生コンクリート試験の概要」では、フレッシュコンクリートの試験にはどのような検査があるのかを説明しました。

今回は実際に、スランプ試験空気量測定塩化物イオン濃度試験について実際の現場を見ながら解説していきます。

 

生コンクリートの採取

まず最初に、生コンクリートを採取しないことには試験は始まりません。生コンクリート業者は、廣瀬建材さんにやってもらいました。

ピッカピカの黄色いミキサー車が建築現場に到着。まず最初に、ミキサー車から試験用に使う一定量の生コンクリートを採取します。

 

一定量の生コンクリートというのは、手押し車(ねこ)1台分に7~8割入るぐらいの量です。

 

採取後、スコップで生コンクリートをよく練り混ぜます

 

これでコンクリートの採取は完了です。

 

スランプ台の設置

次に、スランプ台を設置し、水準器を使って地面と平行になるように高さ調節をします。後述するスランプ試験は、このスランプ台の上で行われます。

 

 

スランプ試験

スランプ試験は、生コンクリートの流動性を調べる検査です。

ここでコンクリート(セメント)の性質を知っておいてもらいたいのですが、

 

コンクリートが軟らかければ、凸型をした基礎一体打ちの型枠内にコンクリートを流し込むことが容易になるので作業性がアップします。

しかし軟らかすぎるコンクリートは余剰水が残るため、ひび割れが発生しやすくなります。

 

余剰水とは、セメントと一体化せずに残ってしまった水分のことです。余剰水が空気中に蒸発するとコンクリートが収縮をし、ヘアクラック構造クラックなどのひび割れの原因となります。

逆に、コンクリートが硬い場合はどうなのかというと、

 
コンクリートが硬ければ流動性が低くなるので、型枠内の隅々にまでコンクリートを行き渡らせるには、現場作業者の技術力が問われます。

 

現場作業者は、コンクリートが軟らかいほうが作業をしやすいので、工場で生産され、配合されたコンクリートに対して現場で水を足すことがあります。もしくは、ミキサー車の運転手が加水を行うこともあります。

 
これが問題となっている不正加水です。

 

現場で加水するということは、工場で設計されたコンクリートは似て非なるコンクリートとなってしまい、絶対にあってはならないことなのです。

 

コンクリート打設工事で大切な3つのポイント

1.工場で適切な値で配合されたコンクリート(生コン業者の質)

2.しっかりとした社員教育を受けたミキサー車の運転手

3.コンクリートの教育を受けている技術力のある基礎工事業者

 

この3点が揃って初めて質の良い基礎ができあがるのです。

以上のことを頭の片隅にいれて、さっそくスランプ試験の解説に入ります。

スランプ試験の検査方法として、

 
台形型の形をしたスランプコーンと呼ばれる試験用の入れ物に生コンクリート入れ、突棒で指定回数突いたたあとで、鉛直上にスランプコーンを抜き取り、コンクリートが下がった距離でスランプ値を求めます。

 

流動性が高いコンクリートは、打設時に空洞やジャンカ(コンクリートの打設不良のひとつ)が生じにくくなります。逆に、流動性が低すぎると前述した通り、余剰水が残って蒸発し、コンクリートが収縮をすることでひび割れの原因となります。

つまり、

 
コンクリートは、「硬すぎず軟らかすぎず」が丁度良いということになります。

 

では、その「硬すぎず軟らかすぎず」という値はどうやって判断するのか?

その判断材料がスランプ値で、一般的には15cm~18cmの間で施工するようになっています。我が家が行ったスランプ試験の結果は、17.5cm だったので合格でした!

 

なお、流動性が高すぎる(軟らかすぎる)コンクリートの場合は、コンクリートが水たまり状になってしまうので、

 
スランプ値の代わりにスランプフロー値を用います。スランプフローとは、コンクリートの広がりの直径のことです。

 

ちなみに、我が家のスランプフロー値は、29cm X 29cm でした。スランプフロー値には許容値はなく、スランプ値の1.5倍~1.8倍が良いコンクリートとされています。

我が家の例だと、スランプ値が17.5cm なので、29÷17.5=1.65倍になるので、良いコンクリートであることが判明されました!わーいわーい。

 

空気量測定

次に、空気量測定を行いました。

 
空気量測定では、コンクリート中に含まれる空気の量が多いか、少ないかによってそのコンクリートの優劣が判断されます。

 

空気量測定では、コンクリートの流動性と圧縮強度を検査します。空気量が多いほど圧縮強度が下ります

検査方法は、

 
空気量測定器(以下写真)に生コンクリートを詰め、手動で圧力を加えていき、測定器に出た空気量の数値によって判断します。

 

我が家が使う生コンの空気量は、4.7%でした(以下写真の赤枠のメモリ)。

 

JIS A 5308の規格では、普通コンクリートでは「4.5±1.5%」が適正値とされているので、その範囲の標準値に限りなく近い値がでていることがわかります。

これで、空気量測定も合格です!

 

塩化物イオン濃度測定

次に、塩化物イオン濃度測定です。

 
塩化物イオン濃度測定では、コンクリート中に含まれる塩化物イオンの濃度を測定し、錆びの発生のしやすさ(発錆度)を検査します。

 

塩化物イオンの濃度が高いほど、鉄筋コンクリート中の鉄筋が錆びやすくなります

検査方法は、

 
生コン塩分濃度計を生コンクリート内に挿入して測定します。

 

現場で使われていた塩分濃度計は、ソルコンのCL-1Bという機種でした。細骨材も計れるそうです。

 

我が家の塩化物濃度の測定値は、0.03kg/㎡でした。

生コンクリートの塩化物含有量は、0.3kg/㎡以下とすることが定められているので、塩化物イオン濃度試験も合格です!

圧縮強度試験

最後に、圧縮強度試験です。

 
圧縮強度試験は、テストピースに6個分の生コンクリートを採取し、28日間水中に漬けておき(材齢28日という)、28日経過後にコンクリート圧縮試験機にかけて、機械的に圧縮した時の強度を平均値で割り出します。

 

つまり、28日間が経過しないと圧縮強度の結果は出ないことになります。

しかしながら、スウェーデンハウスの基礎工事や躯体工事は圧縮強度の結果が出る前に、どんどん工事が進んでいってしまいます。

それで28日後に、

 
圧縮強度の数値がでなかった!(強度が低かった)ということにでもなると、基礎工事からのやり直しとなります!

 

そのやり直し費用を誰が負担するのか?生コンクリート業者か?ハウスメーカーか?それとも基礎工事業者か?

どの業者もそんなトラブルに巻き込まれたくありません。結局のところ、

 
施主がフレッシュコンクリート試験を依頼することで、生コンクリート業者、基礎工事業者も手抜き工事ができなくなるし、ハウスメーカーとしても不安材料のある下請け業者を選ばなくなります。

 

基礎は家の基本です。その基礎を作っているコンクリートはさらに重要なものです。家の寿命が長持ちするかしないかは、基礎コンクリートにかかっているといっても過言ではありません。

なので、フレッシュコンクリート試験は業者の意識を引き締める意味も含め、行っておく価値のある試験だと思っています。

「戸建て住宅だからいいや」という考えを捨て去り、一生涯住むことになる自分たちの家を工事の段階から守るという意識をもって望むことが大切であると感じます。

 

圧縮強度試験を除いたフレッシュコンクリート試験結果のまとめです。

圧縮強度試験の結果は、28日後の日記で紹介します。

次回は、生コンクリートの打設工事について説明していきます。

 

 

生コン業者の優劣は生コンの品質に影響を及ぼします。第3者機関の生コン検査会社に検査を依頼することで事前にリスクを回避することができます。
 
 
 

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